Musilogue

Musilogue(ムジログ)とは、野崎良太(Jazztronik)が中心となりスタートした新しい音楽カルチャープロジェクトです。

記事一覧(34)

歴史的建造物でのコンサート。

Musilogue第3弾アルバムとしてリリースされた『秘色の雨』を担当した田ノ岡三郎・今西紅雪・高橋弥歩の3人によるコンサートが12月1日(金)に東京都文京区にあります求道会館にて開催されます。このコンサートには”SOUND QUEST”というタイトルがついておりまして、箏奏者の今西紅雪が今まさに聴いてほしいと思うメンバーで定期的にお届けしているコンサートシリーズになっています。Musilogueとしても邦楽器と西洋楽器のコラボレーションには力を入れていることもありまして今回皆様にこのコンサートのご案内をさせて頂きました。会場となる求道会館は、欧州留学を経て近代仏教の確立に大きく貢献した浄土真宗の僧侶、近角常観の注文に基づき、同時期にアーツアンドクラフト運動等ヨーロッパ近代建築の新潮流を学んだ新進気鋭の建築家、武田五一により1915年建立されまた。仏教寺院とキリスト教聖堂が融合したような独特の雰囲気を湛える教会堂は、優れた歴史的建造物として東京都有形文化財に指定されています。東西の建築様式を併せ持つ高い天井の木造建築に響く音色は驚くほどまろやかで美しく、どの位置からお聴きいただいても唯一無二の素晴らしい音楽体験をしていただけるでしょう。東西の稀な楽器編成で新しいサウンドを生み出さんとする3人にとって最高の相性といえる舞台です。そんな建築と音楽の出会いも本コンサートの大切な要素としてお楽しみいただけましたら幸いです。求道会館HPhttp://www.kyudo-kaikan.org/

飛鶴 / Hizuru ライナーノーツ by 沖野修也(Shuya Okino)

日本の美京都の"きんせ旅館"で花をいけた。それは野崎良太君と明日佳さんのデュオの為の舞台装置でもあった。きんせ旅館は築100年の宿泊施設兼バーで、不定期に様々なアーティストのライブを行っている。しかも、オーナーの奥様は、僕のいけばなの先生。二人の入洛を聞きつけ連絡を取ったところ、野崎君から「是非お花を・・・」という話しを頂き、3人のコラボレーション?が実現することとなった。渋谷のThe RoomでROOT SOULこと池田憲一に明日佳さんを既に紹介してもらっていたので彼女とは久々の再会となったのだが、野崎君から驚くべきことを聞かされた。何と彼女は僕の家から5分もかからない場所に住んでいるご近所さんだったのだ(引っ越す前の話だけれど)!それだけではない。彼女は我々の音楽に理解があり、二人は、純邦楽のアルバムの制作を画策しているというではないか!!The Roomで一緒にDJをする仲で、同じBOOGIEの愛好家でもあった野崎君の新たな試みに、僕は感心させられると共に、その機動力に舌を巻いた。2009年に琴と尺八のユニットをプロデュースしてから、和楽器を導入したジャズの構想を持っていたものの、未だ実現していない僕に対し、彼は既に形にしてしまっている・・・。それが、この飛鶴だ。毎回様々な編成でユニークな音楽を提案する野崎君のプロジェクト(レーベル?)Musilogueの最新リリースとして、あの時に耳にしたアイデアが作品化されたのだ。アルバムには、勿論明日佳さんが参加し、KYOTO JAZZ SEXTETの栗原健も参加している。一体どんな音楽が収録されているのだろうか?純邦楽の音楽家達と野崎君の組み合わせは何を産み出したのだろうか?僕の好奇心は聴く前からいつになく躍動していた。日本の美。音楽によって描かれた自然と精神。飛鶴の奏でる音楽は、失われつつある美、そして、受継がなくてはならない美を具現化している。これは紛れもなく、今を生きる音楽家による純邦楽で、気を衒うことなく日本人が日本人らしく音楽を作ったアルバムになっている。勿論、野崎良太の作曲家としての力量が最大限に発揮されているし、ファンキーなドラム・サウンドが顔を出す部分もある。それでも、過去の延長線上に存在し、とは言え懐古的ではなく、むしろ普遍性の高い音楽として成立しているのだ。野崎良太、西嶋徹、井上新、波多江健が織り成すバンドとしての基調は、見事なまでに純邦楽とマッチしている。そして、田辺しおりの尺八、木村俊介の三味線と笛、明日佳の琴は、臆することなく生き生きとそのバンド・サウンドの上を舞っている。更には、栗原健、YuraiといったJazztronikでもお馴染みの面々がそのハーモニーの中に違和感なく溶け込んでいる。きんせ旅館でその発想を聞いた時よりも、実際に音を聴いた衝撃の方がその何倍も大きかった。ジャズやアンビエントの影響を完璧に消化した純邦楽の誕生。60年代後半から70年代前半にかけて山本邦山からチャーリー・マリアーノまでが取り組んだ邦楽とジャズの融合より も、更に、"純な"邦楽に踏み込んだ野崎良太の挑戦は、日本の音楽史における事件なのではないだろうか?あの日、僕は舞妓をイメージして花をいけたけれど、花器と流木を組み合わせ、独自の表現で二人の音楽に拮抗すべく悪戦苦闘した。いけばなもまた、現代芸術の一つであるからだ。思い返せばピアノと琴の、いや二人の親和性の高さが、このアルバムの出来を予言していたとも言える。京都のきんせ旅館でそのライブを目撃しただけでなく、文字通り花を添える機会を頂いたのは身に余る光栄。そして、こうしてライナー・ノートまでも任されたのも何かの縁だと思って。またご一緒できる日を楽しみにしている。飛鶴の生演奏を拝見できる機会が一日も早く訪れますように。沖野修也(KYOTO JAZZ MASSIVE/KYOTO JAZZ SEXTET)

飛鶴 / Hizuru

飛鶴とは、野崎良太(Jazztronik)の提案により始まった”純邦楽と現代の音楽との融合により新しい音楽を創造する”音楽プロジェクトです。ロックやJポップの世界でも見る機会が多くなってきた純邦楽器。しかしまだまだ純邦楽には可能性があるのではないかという思いからこの『飛鶴 / Hizuru』は制作されました。そのメンバーも多彩な顔ぶれとなっています。箏の世界でその名を馳せる吉崎克彦氏の長女であり箏奏者としての活動を行う明日佳。尺八奏者の田辺頌山氏を父に持ち自身も尺八奏者として様々な活動を続ける田辺しおり。三味線には、日本各地の神楽や祭礼を取材しその旋法・リズムなどを取り入れた独自の音楽を作り続けている木村俊介。SaxにJazztronikやSoil & Pimp Sessions, Kyoto Jazz Sextet等で活躍する栗原健。ベースには長年ヴァイオリニスト葉加瀬太郎氏のサポートを続けJazzやタンゴなどのシーンでも活躍を見せる西嶋徹。コーラスには初期JazztronikのvocalをつとめたYurai。ギターには東京のアンダーグラウンド音楽カルチャーシーンで活動を続け独自のスタイルを貫く井上新。ドラムにはポップスからジャズまで幅広いシーンの第一線で活躍する波多江健。DJの沖野修也氏曰く「日本の音楽史における事件なのではないだろうか?」との今作は、今を生きる音楽家による新しい純邦楽で、奇を衒うことなく日本人が日本人らしく音楽を作ったアルバムになっている。

Interview vol.3 田ノ岡三郎・紅雪・高橋弥歩 

 ――Musilogue Music Showcaseも今回で3回目。田ノ岡さんは前回(Vol.2)のアンコールでステージに飛び入り参加して演奏しましたね。田ノ岡三郎(以下、田ノ岡) Musilogueはライヴも音源もすごくクオリティーが高いですし、CDのデザイン性も素晴らしいと思っています。前回のライヴを観に行ったときにこれまで発表された音源も購入しましたが、2つの作品は世界観が対局にあって興味深いです。 
――このインタビュー前のリハーサルが3人の初顔合わせということでしたが、それまではおもにグループチャットで交流していたんですよね? 田ノ岡 グループチャットは盛り上がりましたね。恐る恐る自分が書いた曲をアップしたりして(笑)、ワクワク感を積み重ねてきました。僕たちでMusilogueの新たな側面を提案できればと思いますし、何はともあれこのプロジェクトに参加させてもらって幸せです。高橋弥歩(以下、高橋) 僕はツイッターでお二人とは早めに繋がっておきました(笑)。
田ノ岡 想像をいろいろ膨らませてめでたく今回のリハを迎えましたが、実際に音を合わせてみたら新しい発見ばかりでワクワクしました。 紅雪 私はこれまでサックスとアコーディオンとのトリオ編成で活動していたことがあるので、「音が重なるとこうなる」というイメージがありますが、おふたりにとっては箏自体すごく珍しい楽器だと思うし不安もあると思っていたのでリハも最初は緊張して臨みましたが、実際に音を合わせてみると同じ編成でもまったく違う世界になって面白いですね。 
――紅雪さんはフランスを中心に活動するサックスとアコーディオンのデュオ=Rhizottome(リゾットム)と活動されていましたね。田ノ岡 私はRhizottomeの演奏を聴いたことがあったので、彼らと演奏していた方なんだなぁ、とお会いする前から紅雪さんのイメージを高めることができました。 紅雪 ただ、人も変われば出てくる音も変わるはずなので「同じことはしたくない」という気持ちはあります。今回の3人ならではの音楽を追求していきたいですね。
 ――3人ではじめて音を重ねてみて、お互いどんな印象を持ちましたか? 田ノ岡 まず箏という楽器との共演自体が初めてでしたので、実際に音を聴いて表現力の凄さを感じました。紅雪さんにしかできないことがたくさん詰め込まれているような気がしました。紅雪さんがつくった楽曲も素晴らしかったです。 ――今回はみんなで曲を持ち寄って作品にするスタイルなんですか?田ノ岡 みんなで相談して、今回は3人の連名で作品をつくることにしました。全員で曲を書きます。それぞれのメンバーが書く曲ごとに、楽器の音色が劇的に変わってくると思うので楽しみにしていてほしいです。 ――高橋さんとのセッションはいかがでしたか? 田ノ岡 高橋さんは爽やかですね。音色も人柄も。 野崎良太(以下、野崎) 面白いもので、ミュージシャンて見た目の感じがそのまま音になるんですよね。音に人柄が反映されるというか。たとえば栗原(健)くんなら、栗原くんの見た目の印象そのままの音になる。 田ノ岡 栗原さんも共演者のひとりだと思っています。彼が描くCDジャケットの絵も重要で、作品の世界観のひとつだと改めて感じました。CDは楽曲の内容と同じぐらいデザイン性も大事だと思っていますので、栗原さんの絵をあらかじめ観ながら演奏できるのは幸せです。高橋さんの楽曲を演奏するのも楽しみですね。とても爽やかで。 高橋 ただ、最初はとても爽やかだったんですけど…。 野崎 爽やかな楽曲を僕が暗黒にしてしまいました(笑)。
一同 (笑)
野崎 「こうしなきゃいけない」という枠をとっぱらうというのもMusilogue
というプロジェクトの重要な部分なので、弥歩くんが書いてくれた爽やかで
カッコいい曲を「コード進行いらないよ。5分間ずっとDマイナーでいいよ」
と修正した、という。高橋 (おふたりがこれほど即興演奏に長けているとは知らなかったので、)
はじめは自分が書いた曲は決めごとを全て楽譜におこし、ガチガチに構築し
ていました。ただ今回はもっと余白を楽しめるコラボレーションになりそう
ですね。 紅雪 田ノ岡さんは演奏技術がとにかくすごくて音色もきれいで。そして箏
を知ろうとしてくれているなと感じました。つくってくれた楽曲も箏のメロ
ディーラインを意識してくれているというか、すごくかわいらしくて私にと
っては新鮮でしたし、新しい挑戦になりそうです。弥歩さんの演奏は音色に透明感があって、すごく素直な感じがしました。 高橋 でも今日のリハを踏まえて、どんどん暗黒になっていくかもしれません(笑)。 野崎 田ノ岡さんにも「そういうバッキングじゃなくていいと思います」とか言ってみたり、今日はいろいろ話しましたね。  ――ちなみに、野崎さんは今回どんな立ち位置で参加するのですか? 野崎 観客です(笑)。 ――観客にしては踏み込んだ指摘をしている気が…(笑)。 野崎 口うるさい客です(笑)。ミュージシャンはメロディーを奏でるのが自然な動作で、特に日本人はA→B→C→Dとすべてメロディーで構築された楽曲を好む傾向にありますが、それは必ずしも正解ではないという気がしていて。もっと漠然と、テーマひとつあったらそれで5~6分の楽曲を成り立たせることができる、というのもミュージシャンの力量だと思います。ただ、自分で演奏しているとそうやって俯瞰で評価するのは難しいから、今回は僕が3人の演奏を客観的に聴き、率直な意見を言う作業が大事だと思っています。 紅雪 私が演奏する13絃の箏は転調が難しいので、これまでワンコードで演奏する機会は多かったのですが、逆にそれだけだとつまらないと思っていて。おふたりとは逆のアプローチで面白い要素を足していきたいですね。
野崎 ジャズの名曲でも2コードぐらいで成り立っているものがあったりするからね。今回のメンバーは「クラシックだけの人」ではないから、やっぱりある程度の即興性は残しておいたほうがいいと思う。 田ノ岡 そのうえで、予備知識のないお客さんにも感動してもらえる演奏がしたいですね。 高橋 田ノ岡さんは間違いなくリーダー的存在というか、今日のリハもまとめていただきました。アコーディオン奏者との共演は初めてですが、すごく楽しみです。僕は音大の集中講義で箏を習ったことがあるので、箏奏者というと「ひたすら伝統的なことをやっている人」というイメージでしたが、紅雪さんは奏法を含めかなり独自の工夫をしていて、その点にとても感銘を受けました。ぜひライブで観て、聴いてもらいたいと思います。